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部屋の片隅に、小さな「私の部屋」を。役割を脱ぎ捨てて、素の自分を取り戻す「好き」のちから

  • 執筆者の写真: seraphyroom
    seraphyroom
  • 12 分前
  • 読了時間: 5分


少し前から、家の中の物を片付けたり、配置を替えたりしています。


まずは大きな家具から動かしたので、細かいものの整理は後回しになっていました。



そんなある日、ふと机の上に目が留まりました。


気がつくと、ずいぶん前に買ったお気に入りのポストカードを、ずっと替えることなく飾っています。


それは、街中の文具店で偶然見つけて、なんとなく買ったものでした。


当時は「何気ない」動作のつもりでしたが、家中の物を見つめ直している今、あらためてその絵をよくよく見つめてみると、私はこの絵が本当に好きなんだということが、はっきりと分かったのです。


真ん中にぽつんと佇む、黒いねこ。


私は特に猫派というわけでもなく、「猫だから」という理由でグッズを集めることもありません。


それなのに、その猫を囲むオイルパステルで描かれた鮮やかな緑の背景、絶妙な位置と色で置かれた小さな花たち……。


その構図や質感、色の濃淡から、作者のサインの位置にいたるまで、すべてが私の「好み」そのものでした。


だからこそ、この絵が机の上にあるだけで、心がほっと落ち着いていたのです。



大人になると、少しずつ「自分の好き」の輪郭が分かりやすくなってくる気がします。


例えば、服を選ぶとき。


外からどう見えるかよりも、自分が着たときに「身体がどう楽か」というポイントが分かってきます。


袖が中途半端にひらひらしていると少し落ち着かないな、とか。


特に真夏は袖が短いほうが楽だけれど、ノースリーブは組み合わせが難しいな、とか。


冬なら、袖口がほどよく締まるほうが家事もしやすくて融通が利くな、といった具合です。


こうした「身体の心地よさ」に耳を傾けるなかで、この頃あたらしく購入したものがあります。


それは、パジャマです。


これまでは、そのままでも部屋着にできるような服を着て寝ていました。


寝相があまり良くないので、「布団からはみ出したときに肩を冷やしたくない」という理由から選んだ実用的なスタイルです。


でもある日、あるブロガーさんのエッセイ漫画で「パジャマを着ると眠りの質が違う」というお話を見かけました。


「それなら一度試してみよう」と、久しぶりに新調してみたのです。


袖を通してみると、驚くほど軽くて、肌触りがよくて気持ちがいいものでした。


スマートウォッチなどの睡眠データを細かくチェックしたわけではありませんが、体感としてとにかく心地よいのです。


そのパジャマを着る日は、それだけで「寝るのが楽しみになる」ほどでした。



心理学では、このように「今、この瞬間の心地よさ」に100%意識を向けてじっくり味わう心の状態を「マインドフルネス」と呼びます。


「マインドフルネス」や「瞑想」と聞くと、なんだか難しそうに感じたり、静かな部屋でじっと目を閉じなければいけないのかな、と思ったりするかもしれません。


日々の生活に追われていると、改めてそのための時間を作るのは難しいこともありますよね。


でも、自分の「好き」や「身体の心地よさ」を出発点にすると、マインドフルネスはぐっと身近で簡単なものになります。


お気に入りのポストカードを眺めて「綺麗だな、落ち着くな」と感じる瞬間。


肌触りの良いパジャマに包まれて「あぁ、気持ちがいいな」と息を吐き出す瞬間。



これらはすべて、立派なマインドフルネスです。「好き」というポジティブな感情が呼び水になるので、構えることなく、自然と「今、ここ」の感覚に意識を集中させることができるのです。


このように、自分の内側の感覚(専門的には「内受容感覚(ないじゅようかんかく)」と言います)を優しくキャッチして満たしてあげることは、心と体の緊張を緩めるためにとても大切な作業です。



社会人になって一人暮らしを始めた頃は、基本的にほとんどのものが自分の「好き」で囲まれていた、という方も多いかもしれません。


けれど、結婚したり、家族が増えたりと暮らしの形態が変わるにつれて、すべてを自分の「好き」だけで選ぶことは難しくなります。


それに、日々の生活に追われて物を選ぶ余裕がなくなっていくと、気がつけば、どこか生活感に溢れた「実家」のような空間になってしまうこともあります。


今この記事を読まれている方の中にも、家族のために頑張っていて自分専用の部屋がなかったり、家全体を自分の好みに統一することが難しかったりする方はたくさんいらっしゃると思います。


でも、だからこそ、お家のほんの一角でもいいのです。


机の隅や、棚の小さなスペースだけでもいいので、あなた専用の「好き」を置く場所を作ってみませんか?


その小さな景色を見つめている時間だけは、「父親」「母親」「会社員」……といった、日頃背負っているたくさんの肩書きをそっと脱ぎ捨てて、素の自分を思い出してほしいなと思います。


自分の「好き」を素直に感じ、身体の心地よさを味方につけることは、自分を愛おしく大切に思うための、一番近くて優しい近道だと考えています。


あなたの日常の片隅にも、心がふっと緩む「あなただけの場所」が見つかりますように。



【著者:佐藤真理子】


公認心理師。


1970年八戸生まれ、盛岡育ち。


私のミッションは、自己理解と他者理解をほどいて、幸せな人生を送る人を増やすこと。


一人で抱え込みそうなときは、いつでもカウンセリングを頼ってくださいね。


このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。


[カウンセリングのHPはこちら]https://seraphyroom.com


 
 
 

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