top of page

「ピア・サポート」と災害時のリーダーシップでチームを支える ~災害ケア④~

執筆者の写真: seraphyroom
seraphyroom
8月10日
読了時間: 6分


震災から3週間目を迎えようとしています。

 

これまでに、災害に遭われた方への接し方、支援者の燃え尽き対策、そして災害がもたらす「喪失(グリーフ)」についてお話ししてきました。

 

シリーズ最終回となる今回は、支援者(同時に被災者であることもあります)や職場のメンバーが、孤立せずに長く活動を続けるための「組織とチームの仕組み」について考えます。

 

他者を支えるプロやボランティア、そして日々の業務を回す職場の管理者に向けて、仲間同士で支え合う「ピア・サポート」の正しいやり方と、災害時における「適切なリーダーシップ」について、心理学の視点からお届けします。 

 

*

 

仲間だからこそ救われる「ピア・サポート」とは?

 

どれだけ強い精神力を持った人でも、災害という非日常の中で、他者の辛いお話を聴き続けたり、過酷な労働に従事したりしていれば、心はすり減っていきます。

 

そんな時、最も効果的な心の安全網となるのが「ピア・サポート(仲間同士の支え合い)」です。

 

ピア(Peer)とは、同じ立場や共通の経験を持つ「仲間」という意味です。


上司や部下、先輩後輩といった上下の関係ではなく、「同じ過酷な現場を戦っている横並びの仲間」だからこそ、言葉にしなくても分かり合える、深い安心感があります。

 

このピア・サポートは、工夫次第でリアル(対面)でもオンライン(ZoomやSlackなど)でも同じように実施することが可能です。

 

*

 

単なる「愚痴の飲み会・お茶会」との決定的な違い

 

「仲間で話を聴き合うなら、仕事終わりの飲み会や、女性同士のお茶会で愚痴を言い合うのと何が違うの?」と思われるかもしれません。

 

実は、ここには決定的な違いがあり、やり方を間違えると逆効果になる危険があります。

 

私たちが日常で経験する居酒屋での愚痴大会や、長すぎるお茶会は、最初はスッキリしても、時間が長くなればなるほど「誰かを悪者にすること(犯人探しや批判)」で盛り上がったり、ネガティブな感情がその場に伝染して、帰る頃には余計にどっと疲れてしまったりすることがあります。

 

心理的な安全が守られた「正しいピア・サポート」を行うためには、以下の3つの実施条件(ルール)をあらかじめ決めておく必要があります。


*

 

ピア・サポートを機能させる3つの条件


  1. 時間を厳格に区切る:「1回30分だけ」など、だらだらと引き延ばさない。

 

  1. 批判・アドバイスの禁止:「それは間違っている」「もっとこうすべき」という評価は一切せず、相手が感じた「つらさ」や「事実」をそのまま受け止める。

 

  1. 守秘義務の徹底:「ここだけの話」にし、お互いのプライバシーを絶対に外に持ち出さない。 

 

この境界線があるからこそ、感情の泥沼に巻き込まれることなく、「話すだけで心がホッとする」という本来の自浄作用が機能します。

 

ピア・サポートを運営するのに大げさな資格はありません。

 

組織の中で相談し、このような方法で一日の終わりに任意で参加する「少しの時間」を取ることも心を休める助けになります。

 

実際に職場で実施する際、より安全に運用するためのコツを3つ追加しておきます。

 

・時間を区切る具体的なイメージ


例えば「1人3分ずつ順番に話す」「全体で45分」と決め、時間が来たらスパッと終了します。感情が溢れすぎて場が重くなりすぎるのを防ぐためです。

 

・「パス」を認める


「今日は聴くだけにしたい」「話したくない」というときは、何も話さずにパスしてよいルールにします。話すことを強制しないことが安心感につながります。


・「聴くこと」と「治療」を明確に分ける


この会はあくまで「日常のガス抜き・ケア」の場です。


もし参加者の中に「眠れない日が続いている」「涙が止まらない」「自責の念が強すぎる」といった深刻なサインが見られる場合は、メンバーで解決しようとせず、「ここから先は専門の医療機関や産業医、カウンセラーに相談しよう」と、外部の専門窓口につなぐ動線(連絡先リストなど)をあらかじめ用意しておくことが重要です。

 

*

 

災害時に求められるリーダーシップ:職場の管理者向け

 

ここからは視点を変えて、災害時の現場や企業の「管理者・リーダー」の役割についてお話しします。 

 

一般的なビジネスの場では、強いビジョンでメンバーを引っ張る「統率型(カリスマ型)」のリーダーや、共感を重視する「伴走型」のリーダーなど、様々なタイプが求められます。

 

しかし、災害時という危機的な状況において、職場の管理者がとるべき適切な行動は、普段のビジネス論とは大きく異なります。 

 

災害時のリーダーに最も必要なのは、熱い精神論でスタッフを鼓舞することでも、ただ「辛いね」と共感することでもありません。 

 

心理学および危機管理の視点から、災害時に管理者がとるべき「3つの適切な行動」を提示します。

 

① 「休む指示」を業務命令として出す

 

過酷な現場にいるスタッフほど、責任感から「自分が休んだら周りに迷惑がかかる」「今は非常事態だから」と、自ら限界を言い出せなくなります。


優秀なリーダーは、スタッフの「限界サイン(急に無口になる、対応が事務的になるなど)」をいち早くキャッチし、「休むことも、次の支援のための大切な業務である」として、強制的に業務ローテーションやレスパイト(息抜き)の指示を出す必要があります。

 

② 徹底的な「事実と情報の共有」で不安を減らす

 

災害時は、デマや不確実な情報によってスタッフの心理的動揺が広がります。


リーダーは、現在の状況、今後の見通し、役割分担などの「正確な事実」を、隠さずにクリアに伝え続けることが求められます。

 

情報が透明であること自体が、チームの最大の安心感に繋がります。 

 

③ リーダー自身が「セルフケアのロールモデル」になる

 

最も見落とされがちなのが、リーダー自身の燃え尽きです。


「みんなのために」とリーダーが不眠不休で働いていると、部下は絶対に休めなくなります。


まずリーダー自身がしっかりと休み、ご飯を食べ、自分の心を守る姿を見せること。その背中こそが、チーム全体の心理的安全性を高める最高のマネジメントになります。 

 

ちょうどこの記事を書いているとき、SNSで、著名人が猛暑の中で連日支援活動を行い、疲労で病院に運ばれたという投稿を目にしました。

 

「明日も現場に行きます!」という投稿に対し、コメント欄には「あなたが倒れるのは、周りのスタッフも限界であるサインです。


どうか交代で休み、息の長い支援を」とありました。まさにリーダーのセルフケアこそがチームを守るのだと、深く頷いた出来事でした。

 

*

 

おわりに

 

4回にわたってお届けしてきた「災害ケア」シリーズ、いかがでしたでしょうか。

 

被災された方を支えること、そして、その支援者を組織の仕組みや仲間の力で支えること。

 

これらはすべて、バラバラのものではなく、一つの地続きの「心のケア」です。 


誰かを大切に想うあなたの温かい活動が、どうか明日も持続可能なものでありますように。

 

まずは隣にいる仲間と、そして何より、あなた自身の心と体を一番に労ってあげてくださいね。


そして、少し離れた場所から見守る私も、今できる発信や支援を続けながら、皆さまの心身が少しでも楽になることを心から願っています。

 

 

 

【著者:佐藤真理子】

 

公認心理師。

 

私のミッションは、自己理解と他者理解を促し、幸せな人生を送る人を増やすこと。

 

一人で抱え込みそうなときは、ぜひカウンセリングをご利用ください。

 

このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。

 

[カウンセリングのHPはこちら] https://seraphyroom.com

 
 
 

コメント


bottom of page