「仕事を辞めたら生きていけない」と思いつめる前に読んでほしい、4つの話(中堅~管理職編)②
- seraphyroom
- 8 時間前
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第2回:「倒れるまでやるしかない」と思い詰めていませんか?過労の心理メカニズム
前回は、仕事量と人間関係の板挟み(サンドイッチ状態)の中で、私たちの心と体が出している「黄色信号」についてお話ししました。
「楽しかったことが面倒になる」「理不尽な状況に怒りすら湧かなくなる」「週明けの朝、玄関で立ち尽くす」……。
こうしたサインに、薄々気づいている方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、がんばりすぎてしまう人は、なぜ黄色信号が出ていると分かっていながら、ブレーキを踏めずにアクセルを踏み込み続けてしまうのでしょうか。
「自分が未熟だから」「根性が足りないから」――。決してそうではありません。そこには、がんばる人ほど陥りやすい、無意識の「心理的メカニズム」が働いているのです。
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心のブレーキを壊してしまう2つの罠
私たちが限界を超えて走り続けられる裏側には、実は心が自分を守ろうとしたり、適応しようとしたりする結果として生じる「2つの罠」があります。
1つ目は、「過剰適応(かじょうてきおう)」による感覚の麻痺です。
「きつい」「苦しい」という心身の悲鳴をまともに受け止めていると、毎日の激務をこなせなくなってしまいます。
そのため、脳は「あえて感覚をシャットダウンする」という防衛本能を働かせます。
体は悲鳴を上げているのに、心は「何も感じない」状態を作る。
その結果、「しんどくないから、まだ大丈夫」と、自分の限界を見誤ってしまうのです。
2つ目は、「認知の歪み(白黒思考・~すべき思考)」です。
中堅や管理職という責任ある立場になると、「完璧でなければならない」「弱音を吐くべきではない」「自分が我慢すれば丸く収まる」といった強い義務感が、心の自由を奪っていきます。
この義務感が強くなると、心の中の選択肢が「今のまま限界までがんばり続けるか」か「すべてを放り出して仕事を辞めるか」の二択(白黒思考)になってしまうのです。
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「仕事を辞めたら生きていけなくなる!」という叫び
そして、がんばる人を最も追い詰めるのは、心の奥底にある切実な恐怖です。
「今、私が仕事を辞めたら、自分も家族も生きていけなくなる!」
薄々限界だと分かっていても、この叫びが頭をよぎるからこそ、「ここで立ち止まるわけにはいかない」「こなすしかない」と、自分を奮い立たせるしかなくなってしまうのですよね。
仕事は、自分や家族の生活を支えるための大切な基盤です。
だからこそ、簡単に手放せないと思うのは、職業人として、また家族を守る人間として、当然の責任感であり優しさです。
しかし、その「生きるための手段」であったはずの仕事が、いつの間にか「目的」にすり替わり、視野が極端に狭くなってしまうことがあります。
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家族から見た「客観視」が、本人にはできなくなる恐怖
私が過労の心理について深く考えさせられ、強い衝撃を受けた本があります。
経済学者である熊沢誠氏の著書『働きすぎに斃れて――過労死・過労自殺の語る労働史』(2010年 岩波書店)です。
この本の中には、さまざまな職種・年齢層などの視点から多くの具体的な過労死・過労自殺の事例が描かれています。
少し悲痛な思いを読者の方にさせてしまうかもしれませんが、環境調査会社で働き、突発性心機能不全で亡くなった夫に宛てた、妻が書いたリアリティのある手紙を引用します。
“あなたが仕事をしていたころ、毎晩(朝)帰宅が遅いのに私が心配して、転職をすすめたことがありました。会社をやめてほしいと何度も言いましたね。でも、家族のためにこれだけの仕事をしているのだ、社会的責任もあるのだと、そして私が自分の気持ちを理解してくれないと、あなたは言いました。そして死んでしまった。あなたが守りたかったものはなんだったのですか。死ぬほど大切にしたかったのは、なんだったのですか。(後略)”
(「働きすぎに斃れて」熊沢誠著2010年発行 第1刷 194P)
私はこの本を読んだとき、家族から見た当然の「客観視」が、当のご本人には全くできなくなってしまっていたという、あまりにももどかしく、悲痛な現実に衝撃を覚え、その恐ろしさを胸に刻み込まれました。
「命を失うかもしれないのに、仕事に行く」――。
客観的に見れば、命より大切な仕事などないことは明白です。
しかし、過酷な状況で視野が狭くなると、私たちは「休む=みんなに多大な迷惑をかける(=悪だ)」と思い込み、命の危機に瀕していてもなお、自らハンドルを握る選択をしてしまうことがあるのです。
ここまで極端ではなかったとしても、私たちの日常でも同じことが起きています。
例えば病院に行くことを先延ばししたり、体調が悪くても休みを取らずに出勤する、ということはあるのではないでしょうか。
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「辞める・辞めない」のあいだにある、グラデーションの選択肢
もし、今あなたが「仕事を辞めたら生きていけない、だから倒れるまでやるしかない」と思いつめているとしたら、まずはその「二者択一の罠」から、一歩だけ外に出てみませんか。
「今のまま限界までがんばる」か「辞める」かの2つの選択肢しか見えなくなっているのは、心が疲れて視野が狭くなっているサインです。
実際には、そのあいだにたくさんの「グラデーションの選択肢(工夫)」が存在します。
仕事のクオリティを、一時的に「7割」に落としてみる
「ここまではできるけれど、これ以上は手伝ってほしい」と、周囲にアサーティブ(誠実に対等)に境界線を引いてみる
「私がやらねば」という義務感のブレーキを、少しだけ緩めてみる
会社を辞めなくても、あなたの命と健康を守りながら、今の場所で「もう少し楽に生き延びる工夫」は必ずあります。
生きていくための仕事で、あなたが斃(たお)れてしまう必要は、どこにもないのです。
では、具体的にどのようにして、その「働き方や考え方の工夫」を取り入れていけばよいのでしょうか。
次回(第3回)は、がんばりすぎるあなたの心を少しずつ緩め、日常の中で実践できる具体的な「セルフケアとマインドの工夫」について、公認心理師の視点からお話ししていきたいと思います。
今日も、命を守って走りきったご自身を、まずはたくさん労ってあげてくださいね。
【著者:佐藤真理子】
公認心理師。
私のミッションは、自己理解と他者理解を促し、幸せな人生を送る人を増やすこと。
一人で抱え込みそうなときは、ぜひカウンセリングをご利用ください。
このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。
[カウンセリングのHPはこちら] https://seraphyroom.com




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