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「仕事を辞めたら生きていけない」と思いつめる前に読んでほしい、4つの話(中堅~管理職編)③

執筆者の写真: seraphyroom
seraphyroom
12 分前
読了時間: 6分

第3回:LINEの返信が億劫になったらアラーム。自分基準でつくる「心身の取扱説明書」


前回は、私たちが心と体の悲鳴に気づきながらも、なぜ走り続けてしまうのか、その心理的な背景についてお話ししました。

 

「仕事を辞めたら生きていけなくなる」という切実な恐怖から、選択肢が「限界までやるか」「辞めるか」の二者択一になってしまう罠。

 

今回は、その極端な二択から一歩外へ出て、今の場所であなたの命と健康を守りながら、もう少し楽に生き延びるための「日常の工夫」についてお伝えします。

 

そのために、まずは世間の基準ではなく、あなただけの「心と体の取扱説明書(トリセツ)」を作ってみることから始めてみましょう。

 

 

「みんな」ではなく「過去の自分」を基準にする

 

がんばりすぎる人は、無意識のうちに「普通はこれくらいできるはず」「周りのみんなは平気そうなのに」と、他人の基準や理想の基準に自分を無理やり合わせようとして疲弊してしまいます。

 

完璧主義や「~すべき」という強い義務感を少し緩めるために、まずは「自分自身のキャパシティ」という原点(自分基準)に立ち戻ってみませんか。


一人ひとりの顔が違うように、「心身の疲れやすさ」も「回復にかかる時間」も違うのが当然なのです。

 

そこで、ひとつの目安として注目していただきたいのが、あなたの調子がよかった頃の睡眠時間です。

 

忙しくなる前のあなたは、大体何時間ほど眠れていれば、翌朝すっきりと起きられていたでしょうか?

 

「元々は7時間寝ないとダメなタイプだった」という人が、最近は5時間睡眠が続いていたり、布団に入っても仕事のことが頭を離れず熟睡感がなかったりする。


これは、立派なキャパシティオーバーのサインです。

 

「みんなは5時間睡眠でも平気そうだから」は関係ありません。


あなたの体が本来必要としている基準と、現在の生活を一度照らし合わせてみてください。

 


あなただけの「トリセツ」に書き出す2つのポイント

 

自分のキャパシティを思い出したところで、ノートやスマホのメモに、あなたオリジナルのトリセツとして次の2つのリストを書き出してみましょう。

 

1つ目は、「私の限界サイン(アラーム)」です。


「体調を崩して寝込む」といった大きな事態になる手前の、日常のささやかな変化を書き留めます。

 

  • 「今までできていたLINEの返信が、急に億劫になって未読のまま溜まる」

     

  • 「いつもなら気にならない後輩のちょっとした言動に、心の中で激しくイライラする」


  • 「大好きだったドラマや動画を観る気が起きず、テレビの画面をぼーっと眺めているだけになる」

     

こうした「いつもと違う、細かい面倒くささ」こそが、あなたの心のアラームです。

 


2つ目は、「私の回復リソース(心の栄養)」です。


これまでに自分が本当にホッとしたこと、短時間でも元気になれた小さな行動や環境をリストアップしておきます。

 

  • 「お気に入りの入浴剤を入れて、お風呂に15分ゆっくり浸かる」

 

  • 「好きなカフェの、あの席で静かにコーヒーを飲む」

 

  • 「休みの日は、部屋を暗くして誰にもじゃまされず布団に潜り込む」

 

  • 「ただただ、好きな音楽を聴きながら散歩をする」

 

心がエネルギー切れを起こすと、「何をすれば元気になるか」さえ思い出せなくなります。

 

だからこそ、元気なうちにこの回復リソースを書き出しておくことが、あなたを救うお守りになります。

 

 

アサーティブで叶える「自分も相手も大切にする」境界線

 

トリセツによって「できること(自分のキャパシティ)」と「できないこと(限界を超えていること)」が見えてきたら、次はそれを実際の仕事現場でどう表現するか、という一歩に進みます。

 

特に中堅・管理職になると、「周囲への影響を考えなければ」「人に迷惑をかけたくない」という責任感から、無理な依頼も断れずに引き受けてしまうことがあります。


そのため、無理な依頼も断れずに引き受けてしまいがちです。

 

相手を気遣う優しさを保ったまま、自分の限界を守るために役立つのが、「アサーティブ・コミュニケーション」という考え方です。

 

アサーティブとは、「自分も相手も対等に大切にする」表現のこと。


「人を不快にさせないように」と相手にばかり気を遣って、自分が我慢するのはアサーティブではありません。

 

逆に、感情を爆発させて「無理です!」と突っぱねるのも違います。

 

例えば、これ以上の仕事は引き受けられないと感じた時、アサーティブな視点では以下のように伝えます。

 

「お声がけいただきありがとうございます(相手への敬意)


ただ、現在〇〇の案件を抱えておりまして、私の現在のキャパシティでは、ご希望のクオリティと納期でお引き受けすることが難しい状態です(事実としての限界の提示)


もし、納期を来週まで延ばしていただくか、業務の一部を他の方に分担していただけるようであれば、喜んでお引き受けできます(前向きな代替案)。」

 

このように、「できないこと」を伝えるのは、怠けでも拒絶でもありません。


プロとして、引き受けた仕事の質を保証するための「誠実な線引き」なのです。

 

相手を気遣うあなたのその素晴らしい力を、これからは「自分自身の心身を守ること」にも、同じように使ってあげてくださいね。

 

 

選択肢を広げたその先にあるもの

 

いかがでしたか?

 

「仕事を辞めるか、倒れるまでやるか」の二択しかなかった世界に、「自分の睡眠時間を守る」「限界サインが出たら回復リソースを試す」「アサーティブに相談して仕事の調整をする」といった、たくさんのグラデーションの選択肢が見えてきたのではないでしょうか。

 

自分基準のトリセツを持ち、小さな線引きをすることは、あなたがあなたらしく働き続けるための第一歩です。

 

けれど、職場の環境や構造そのものがどうしても個人の工夫だけでは変えられない時や、アサーティブに伝えても受け入れてもらえないような、自分一人では抱えきれない問題に直面することもあります。

 

最終回となる次回(第4回)は、そんな「個人の限界を超えた問題」にどう立ち向かうか。

 

誰を頼り、どのように環境を動かして解決していけばいいのかについて、お話ししていきたいと思います。

 

今夜はぜひ、あなたの元々の「すっきりする睡眠時間」を思い出しながら、少しでも長く、心地よい眠りにつけますように。



【著者:佐藤真理子】


公認心理師。


私のミッションは、自己理解と他者理解を促し、幸せな人生を送る人を増やすこと。


一人で抱え込みそうなときは、ぜひカウンセリングをご利用ください。


このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。


[カウンセリングのHPはこちら] https://seraphyroom.com


 
 
 

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