「仕事を辞めたら生きていけない」と思いつめる前に読んでほしい、4つの話(中堅~管理職編)④

第4回:会社の窓口が怖いのは当然。外の世界を「お守り」にして生き延びるキャリアの選択
全4回にわたってお届けしてきたこの連載も、いよいよ最終回となりました。
前回は、他人の基準ではなく「自分基準」で心と体の取扱説明書(トリセツ)を作ること、そして自分も相手も大切にする「アサーティブな線引き」についてお話ししました。
けれど、これを読んで「そんな正論が通じるような職場じゃない」「やらなければならない仕事の量は変わらないんだ」と、組織の構造に深い絶望や限界を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大企業ならではの硬直した体制、中小企業のギリギリの人員配置、あるいは家族経営の会社特有の距離感……。
それぞれの場所で、「一人の労働者にはどうにもできない壁」に突き当たることがあります。
今回は、そんな「個人の工夫や努力の限界を超えた問題」に直面したとき、誰を頼り、どのようにご自身の命と健康を守っていけばいいのか、一緒に考えていきましょう。
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「社内の窓口」に抵抗があるのは、当然のこと
よくメンタルヘルスの基本として「産業医や社内の相談窓口に相談しましょう」と言われます。
しかし、実際に悩んでいる当事者の方々にお話を伺うと、
「社内の人に相談したら、評価に響くのではないか」「上司に話が漏れて、余計に居づらくなるのではないか」
という強い抵抗感や不安を抱えているケースが非常に多いのが現実です。
そう感じるのは、あなたの警戒心が強いからではなく、組織で生きる一員として当然の自己防衛、リアルな感覚です。
もし社内の仕組みを使うことに躊躇してしまうなら、無理にそこに飛び込む必要はありません。
まずは、会社と完全に切り離された「外のプロ」の手を借りてみませんか。
私たち公認心理師や臨床心理士といった外部のカウンセラーは、守秘義務のもと、あなたの会社での利害関係とは一切関係のない安全な場所で話を聞く専門家です。
社内では絶対に言えない本音を吐き出し、狭くなってしまった視野を一緒に広げ、心が潰れてしまう前に次の一手を練るための伴走者として、ぜひ活用していただきたいのです。
カウンセリングで何が変わるのか?と思う方もいらっしゃると思います。
実際、受けてみても何も変わらずがっかりする事例もあるかもしれません。
でも人は思った以上に、溜め込んでいた感情を「話し」、「聴いてもらう」ことで、心がすっと軽くなることがあるのです。
厚生労働省の「こころの耳」などの公的な外部窓口も、最初の安全な駆け込み寺としておすすめです。
ここでSOSを出すことは、決して「敗北」でも「能力不足」でもありません。あなたの命を守るための、賢く主体的な問題解決の選択です。
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「転職」という選択肢を、今すぐではなく「お守り」として眺めてみる
それでも、どうしても組織の体制が変わらないときや、心身の限界が近づいているとき。
私たちは「休職」や「異動」を上司に掛け合ったり、あるいは「転職」という文字が頭をよぎったりします。
しかし、真面目で責任感の強い人ほど、「ここで辞めたら逃げになる」「次のあてがないのに動けない」と、その選択肢にすら罪悪感を持ってしまいがちです。
ここで少し、時代の変化に目を向けてみませんか。
ひと昔前、10年・20年前であれば、「一つの会社を途中で辞めること」や「いくつもの職場を渡り歩くこと」を、「根気が続かない人」とネガティブに捉える傾向が確かにありました。
しかし、今の時代はキャリアに対する価値観がはるかに柔軟に、ポジティブに変わってきています。
現在では、転職経験を一律に「根気が続かない」と否定的に見るのではなく、それまでの経験やスキルを含めて評価する企業も増えています。
さらに、これからの長い高齢化社会を見据えたとき、年齢だけにとらわれすぎず、「これからの人生、自分はどう生きていきたいか」というライフワークの視点で、今後のキャリアを考えることは、むしろとても前向きで健康的なことだと言えます。
もちろん、「今すぐ会社に辞表を出しなさい」と言っているのではありません。
ただ、「いざとなったら、私には別の場所を選ぶ権利もあるんだ」「他の生き方だって選べるんだ」と、そうした選択肢があることを、一度立ち止まって考えてみる。
視野のなかに「外の世界」を置いておくだけで、不思議と今の職場でかかるプレッシャーが少し軽くなることがあります。
「転職」という選択肢を、あなたの心のお守りとして持っておいてほしいのです。
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最後に、がんばりすぎるあなたへ
全4回を通してお伝えしたかったのは、シンプルなひとつのことです。
「どんな仕事も、組織の都合も、あなたの命と健康より大切なものは絶対にない」ということです。
生きていくための仕事で、あなたが斃(たお)れてしまう必要はどこにもありません。
環境を変えること、立ち止まること、誰かに頼ることは、決して無責任な「逃げ」ではなく、自分の人生のハンドルを自分で握り直すための、最も主体的で勇敢な決断(究極のセルフケア)です。
中堅・管理職として、周囲のために、家族のために必死に戦ってきたあなた。
まずは今日、ここまでがんばって生き抜いてきたご自身に、心からの「よくがんばったね」を贈ってあげてください。
あなたがあなた自身のことを一番に大切にし、しなやかに、心地よく歩んでいける未来を、公認心理師として心から応援しています。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
【著者:佐藤真理子】
公認心理師。
私のミッションは、自己理解と他者理解を促し、幸せな人生を送る人を増やすこと。
一人で抱え込みそうなときは、ぜひカウンセリングをご利用ください。
このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。
[カウンセリングのHPはこちら] https://seraphyroom.com




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