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誰かを支えるあなたへ。二次受傷とバーンアウト(燃え尽き)を防ぐセルフケア ~災害ケア②~

執筆者の写真: seraphyroom
seraphyroom
8月6日
読了時間: 5分

更新日:8月6日


前回の記事では、震災から2週間が経った被災地の心理状態と、焦らない心のケア(PFA:サイコロジカル・ファーストエイド)についてお話ししました。

 

今回は視点を「支える側」に移します。

 

プロの聴き手や傾聴ボランティアの方はもちろん、被災した友人や知人の話を聴いている人、インタビュアー、そして介護や医療、福祉などの対人サービスに関わるすべての「支援者」に向けて、いま最も気をつけてほしい「二次受傷」「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の防ぎ方をお伝えします。

 

 

聴き手が陥りやすい「二次受傷」セルフチェック

 

辛い体験をした人の話を熱心に、共感的に聴けば聴くほど、聴き手自身の心にもその傷が深く響いてしまう(あるいは重なってしまう)ことがあります。

 

これを「二次受傷(共感疲労)」といいます。

 

これはプロの心理職だけでなく、友人の相談に乗っている人や、取材を行うインタビュアーにも等しく起こる現象です。

 


まずは、あなたの心と体に以下のようなサイン(初期症状)が出ていないか、セルフチェックしてみましょう。

 

  • 相手の話(被災時の情景など)が、夜寝る前などに頭から離れない


  • 普段なら気にならない些細なことで、イライラしたり涙もろくなったりする


  • なぜか熟睡できない、または悪夢を見るようになった


  • 「自分は温かい部屋にいて申し訳ない」といった過度な罪悪感がある


  • ニュースを見るのが辛くなり、感情が麻痺したように何も感じなくなる


もし2つ以上当てはまるものがあれば、あなたの心は「共感の限界量」を超え始めています。

 


心を守る盾:「バウンダリー(境界線)」の引き方

 

二次受傷を防ぐために最も重要なのは、相手との間に健康的な「バウンダリー(心理的境界線)」を引くことです。

 

冷たく突き放すという意味ではありません。

 

「相手の課題」と「自分の課題」を切り離すということです。

 

「私は私、目の前の人は目の前の人。相手の人生の責任を、私がすべて背負うことはできない」という一線を、意識的に心の中に引いてください。

 

具体的には、話を聴く「時間」や「回数」をあらかじめ決めておくこと。

 

そして、話を聴き終えたら「共感のスイッチ」をオフにし、深呼吸をして「私の日常」に戻る儀式(手を洗う、温かいお茶を飲むなど)を作ることが効果的です。


私の場合は、カウンセリングルームで対面でお話を聞いていた頃は、必ず前後に手を洗う・部屋の空気を入れ替えるという儀式を取り入れ、気持ちを切り替えていました。

 


対人サービス従事者をおそう「バーンアウト」

 

ここで少し視点を変えてみましょう。災害時に過酷な負担がかかるのは、「聴く人」だけではありません。

 

被災地やその周辺で、高齢者や障害者、子どもたちを支える介護・福祉、医療、役所の窓口などの「対人サービス」に関わる人たちもまた、深刻な危機に瀕しています。

 

こうした現場では、自分の疲れを後回しにして「いまは非常事態だから」「目の前の人が困っているから」と、2週間ノンストップで走り続けてしまいがちです。

 

その結果、ある日突然、エネルギーが完全に枯渇してしまう「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を引き起こします。

 

 

バーンアウトの3大症状


  1. 情緒的消耗感:心も体もエネルギーが完全にすり減り、優しくする余裕がなくなる。

 

  1. 脱人格化:相手(利用者や患者)を「一人の人間」として見られなくなり、事務的で冷淡な態度をとってしまう。

 

  1. 個人的達成感の低下:どれだけ頑張っても「自分は何もできていない」と無力感に苛まれる。

 

 

もし、普段は温厚なスタッフが急に冷たい態度をとるようになったり、無気力になったりしているなら、それは本人の性格の問題ではなく、バーンアウトの危険信号です。

 

支え続けるための3つの組織・個人対策

対人援助職が燃え尽きず、持続可能な支援を行うためには、精神論ではなく「具体的な仕組みと対策」が必要です。

 

① バランシング(オン・オフの切り替え)

個人的にできる対策です。仕事中(オン)はプロとして全力を尽くしても、一歩現場を離れたら(オフ)、罪悪感を持たずに「自分の生活」を楽しんでください。

 

美味しいものを食べる、好きな音楽を聴くなど、五感を心地よく刺激して心身のバランスを取り戻しましょう。

 

② 業務ローテーション(組織の工夫)

 

組織やチームで動いている場合、特定のスタッフに負担が集中しないよう、業務をローテーションさせることが不可欠です。

 

「最も過酷なエリア・担当」と「比較的落ち着いた事務作業」などを交互に配置し、一人に重荷を背負わせない工夫をしてください。

 

③ レスパイトケア(息抜きと休息)

 

レスパイト(Respite)とは「一時中断」「息抜き」という意味です。

 

介護や支援の現場から物理的に距離を置き、心身を解放する時間を強制的に確保することです。

 

「休むことも、次の支援のための大切な業務である」という共通認識を、組織全体で持つことが、震災関連死や離職を防ぐ最大の防衛策になります。

 

人手のない現場で、休みを取るのが難しいかもしれませんが、トップに立つ方は意識的に交代で休んでもらうようにシフトを組むなどしてください。

 


おわりに

 

誰かを助けたい、支えたいというあなたの優しさは、とても尊いものです。

 

しかし、「あなた自身が健康で安全であること」以上に優先される支援はありません。

 

救助飛行機のアナウンスでも、「まずはご自身の酸素マスクを着用してから、お子様におつけください」と言われますよね。

 

心理支援も対人サービスも、全く同じです。

 

まずはあなたがしっかりと息を吸い、自分をケアすること。

 

その余裕の分だけ、目の前の人により質の高い、温かい支援を届けることができるのです。


息長く支援を続けるためにも、いつも頑張っているご自身の心と体を、たくさん労ってあげてくださいね。

 

 

次回は、視点を当事者に戻し、喪失を経験した方々が辿る心理について、カウンセリングの現場で感じたこともふまえてお伝えしたいと思います。




【著者:佐藤真理子】


公認心理師。


私のミッションは、自己理解と他者理解を促し、幸せな人生を送る人を増やすこと。


一人で抱え込みそうなときは、ぜひカウンセリングをご利用ください。


このブログでも、少しずつ「心をほどくヒント」をお届けしていきます。


[カウンセリングのHPはこちら] https://seraphyroom.com

 
 
 

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